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日々思うこととか、アニメの感想とか かなり気まぐれです ネタバレ要注意!
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まだ遊んでる場合じゃない事には変わりないんですが

いろいろやってました
なんか、早く最終ページが描きたいそんな気分



いろいろ考えると
ちょっとグロイかもしれない
------
月が、赤かった


その赤さに神の一族の彼を思い浮かべる
漆黒の空にそれはとても映えていて

明日地震でも起こるんじゃないかとさえ思った


沈黙を壊すようにポツリと彼が言った






「今日は外に出るなよ」





「え…」
「このまま帰って、部屋から出ないように」絶対にね

カイルの念を押した声が響く
今の部屋と言えば、洞窟の中
月なんて見えやしない

残念そうにロウビィははーい、と返事をした





(暇だ……)
やることがないわけではない
やる気が起きないのだ

先ほど見ていた赤い月がどうも脳裏に焼き付いて離れない
カイルが何度も念押しして外に出るなと言うのは、何なのか

昔から月には魔力があると言われている
変な魔力に引き寄せられてどこかに行かないように…か

(そんな子供じゃあるまいし)迷子になんかなるものか

暇をもてあそぶ状況にロウビィはベッドの上でゴロゴロとする
こんな時間にカイルやウィンの部屋に遊びに行くのもどうかと思った

そんな中、一匹の蜂が部屋に入ってきた





「え…?」やられた!?

報告によると、何匹もの蜂が何者かに殺されたらしい
緊急事態を知らせる蜂と先ほどのカイルの警告が重なる

(蜂が殺されるって事は…俺たちの敵か…?
 いやでも、カイルさんは出るなって言ってたしな…)

数匹の蜂が帰ってきた
どうやら敵は多数

このアジトの周りに集結しているらしい
蜂の情報から敵の配置が
何かを取り囲むように円状になっている事がわかった

中心はここから、そう遠くない
下手に首を突っ込んで、迷惑を被るのはロウビィだけではない
しかし、やられた蜂の数から放置できる状況でないのも確かだった

「行くか?」
トーンの低い声が響く

扉を背に日本人形が立っていた












「何だ…コレ」

月の赤さと同じくらい…否それ以上の赤が広がっていた

厳密にいえば、黒っぽいのだが
いかんせん脳内で赤く変換される




アジトから数分
岩肌が真っ赤に染め上がっていた

満月とはいえ夜は夜
暗いお陰で見たくないものは見えずに済んでいる

尤もスピリタスはソレを避けるようなルートを歩んでいるのだが

「何で…何かあったのかよ」
「ロイヤルハンターだな」
「ロイヤルハンター? あぁ、以前パーロツォーネが襲われた」
「そうなのか? あいつはロイヤルじゃないだろう
 いや、大体わかった」

スピリタスと目が合う
彼女のはっきりとした言い方にロイビィは少しびくついた

「何だよ、そのロイヤルハンターって」
「知らないのか?」クズが

「一族の王族を狙うハンターの一種だ」
「王族?」
「純血種とも言う」
「はぁ」

「聞いたことくらいあるだろう
 不死鳥族の血を飲むと不死身になるとか、
 竜族の肉を食むと不老不死になるとか
 そういうのを信じきっている迷信深い奴らで
 ロイヤルは王族…つまり、王族や純血種のみを専門に扱うハンターだ」
「パーロも王族なのか?」神の一族ではあるけど
「リッカは外来の一族だが、パーロツォーネの髪や眼は赤いからな
 それだけで希少価値は高い上に、何かしらの薬効くらいありそうに見えるだろう」

確かに、とロウビィは頷いた
神の一族とか言われていて、あそこまで赤い髪と眼を持っていれば
不思議な力くらい秘めていそうな感じはする
スピリタスの言った言葉を反復させながら
ロウビィはふと気がついた

「俺らの中に王族っている?」まさかカイルさん?
「ただの偶然だ」
「偶然?」
「たまたま狙いがこの近くに来ていた」それだけだ

「狙いって」
「来るぞ」

ごう、と風が吹いた









地面から蓮の花のような刃が生える
それに足を取られる人が一人

空中を竜のような火が舞う
それに焼かれた人が一人

宙で剣が響き合う
それに切られた人が一人

風が衝撃波となる
それに飛ばされた人が数人





2人で木陰に隠れたはずが
物凄い魔力の波が襲い掛かる

わずか数秒でそれは過ぎ去っていった

「すげぇ…」カイルさん並みだな
「それ以上かもしれないな」

さらりとスピリタスは感嘆の言葉を言った
「カイルさん以上って…」何が起こっているんだ?

「依炉波だ
 渚羽の一位、依炉波がロイヤルハンターと戦っている」
「はぁ!? 何だよそれ」
「渚羽依炉波の実力は未知数だからな
 その噂を聞きつけたロイヤルハンターが何かの王族ではないかと推測し、
 それを知った依炉波が戦いを仕組んだ」
「仕組んだって」えぇ!?
「渚羽のシステムからも想像がつくだろう
 依炉波は今日、ここに来る事をロイヤルハンターたちに伝え、
 彼らが襲ってくるのを返り討ちにしているのだ」
「あ、あれ…依炉波さんだったんだ…
 でもなんでそんな…そこまで戦闘が好きなのか?」
「クズが これも策の一つだ
 不意打ちを食らうよりは、こちらからしかけた方が準備ができるからな
 それに今回の戦いでロイヤルハンター側を木っ端微塵にしておけば
 以降狙ってくる奴らを限定することができる」
「あぁ、そう…」

ただの戦闘マニアだと思った事は撤回した
「じゃあ、カイルさんが外に出るなと言ったのは…」
「この戦いに巻き込まれないようにだな」
「俺の蜂がやられたのは?」
「依炉波の使い魔だと思われたか…まずい!!」
「え?」

スピリタスの顔が近づく
小柄な体で体重をかけてロウビィを押し倒したスピリタスの
髪がパラリと切れた

スピリタスの指が宙に陣を描く
瞬時に防御壁が張られた

轟音と共に炎が2人の上を通る
彼女の防御壁で大分威力は落ちているものの
それでも熱さは感じた


「気付かれたか」来るぞ
炎が過ぎ去った直後に、スピリタスは数体の人形を出す
両手で陣を描き、ヴァルク流魔術の構えをとる


人形が剣を持ち、盾を持ち
それぞれが人と戦う

切れのいい音が辺りに響き渡った
「渚羽の仲間か」やれっ!!

立ち上がったロウビィに一人のロイヤルハンターが切りかかる
ソレを避け、腹に蹴りを一発

直後、スピリタスの人形がハンターを背後から襲った
「どうする?」
「このまま退けばアジトがばれる
 適当に散らすぞ」
「了解」

とは言ったものの、ロウビィはスピリタスのように戦う事はできない
数体の人形に守られながら、使えない笛を片手に周囲を見渡すことしかできなかった


ふと空を見ると、そこには蓮の花が咲いていた

月明かりに照らされて、七色に光るそれは
まるで月を食わんとするかのように咲き誇る

一瞬の間の後、蓮の葉が周囲に飛び散った


「伏せろ!!」
スピリタスの人形に押し倒されて、ロウビィは地面に体を叩きつけられた
が、直後に蓮の葉が上を通り過ぎる

無数の悲鳴が響き渡った
何かが飛び散るような音が聞こえる

スピリタスは続いて爆ぜた蓮の葉が
ロウビィに迫っている事に気付いた

「避けろっ!」ロウビィっ!!
スピリタスの声と共に、ロウビィをかばった人形が真っ二つに割れた

「っ……!!」
体を横に転がして刃を避ける
反動で起き上がると、僅かにかすった左手が痛んだ

スピリタスはロウビィの手を掴むと全力で走りだした
「このまま退く」
「大丈夫か?」
「いや、カイル様の援軍を要請す…」







そういえば、そうだった

普通に動いているから喋っているから普段は気付かないが


パキン




ロウビィの目には割れたスピリタスの体が映っていた


バラバラとスピリタスの木片が地面に落ちる
最後の意思でロウビィを巻き込むまいと自爆を防いだスピリタスは
微かな声でロウビィに言う
「このまま、全力で走れ」

「……わかった」



後ろからは何人ものロイヤルハンターが追いかけてくる

微かに聞こえた爆発音
後ろに連なる悲鳴

月明かりを背に宙に浮く少年・依炉波


ロウビィはアジトへ走り続けた
(スピリタス……)
ロウビィが離れてやっと自爆できた彼女の事を思っている場合ではない
今は自分が逃げなければいけないのだ




途中何度か岩に足を取られたものの、アジトの入り口はもう見えている
あとはそこに駆け込めば、そう


アジトの入り口には金髪金眼の少年の姿が見えた
彼がこちらへ走ってくる
(助かった)
安堵した一瞬に背中に殺意を感じる

無意識に振り向くとロイヤルハンターらしき人が剣を構えていた
その太刀筋を見切るのは容易ではない

2、3回避けたものの、足が崩れる
完全に捉えられたその軌跡をカイルの拳銃が防ぐ

回し蹴り、そして蹴りあげ
回転するようなその流れ

最後にバンと銃声が響いた

「……ロウビィ」だから外に出るなと言っただろう
「すみません」

両手に銃を構えたカイルは周囲を見渡すも、
他には誰もいなかった

「スピリタスもスピリタスだ
 いくら依炉波卿に興味があるからと…まったく」
「そうだ、スピリタス」
「自爆したんだろう、大丈夫だ」替えはある


はっと、カイルは銃を下げたまま、一点を見つめた
そこには血にまみれた和服を着た銀髪の少年が一人

ロウビィが軽くお辞儀をすると、彼は闇の中に消えていった


「助けて…くれたのかな…?」
「渚羽とゴードは不干渉のはずなんだけれどね…」
「あ…すみません」

月明かりを浴びて、首から下げていたカイルのシルバーが
キラリと光る



2人とも、後で反省会な


ハァとため息交じりにカイルが呟いた
------
依炉波を戦わしたかった
だたそれだけです

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「緑色の砂」
------
昼下がり、心地よい日差しが子供たちを包み込む

「属性と言うのは2種類あります
 まず一つ目は術師自身の属性…魔源属性といいます
 術師の魔力の源となるのが何か…地水火風、陰陽、光、闇が基本ですね
 またこの属性が生まれつきか生まれてからついたものかによって
 先天性、後天性と分けて考える考え方もあります」

子供たちは黒板に書かれた文字を見て頷く

「そして2つ目は術の属性…そのまま術属性ですね
 その魔術が何の属性か、これには先ほど言った地水火風、陰陽、光、闇の他に
 超…超能力、呪妖霊など様々に分類されます
 超能力や呪妖霊などは魔術とは別に分類されていますが」

「属性を知ることは術師にとってとても重要な事です
 下位の魔術は属性に関係なく大抵誰でも使えます
 しかし、上位の魔術となると、その属性を極めないと使えないものが多くなります
 火なら火属性、超なら超能力…といったように
 上位魔術を使う多くの術師は一つの系統を極めることになります」

黒板からはチョークのカチカチした音が響く
さて、と女性は続けた
「では、どの属性を極めるか…基本的には自分の魔源属性と同じ属性を
 極める事が多いです
 しかし、火魔源属性が水属性の術を使う事も出来ますし、
 一概には言えません
 また、呪妖霊や超能力などは魔源属性にありませんので、
 それらでは魔源属性との関連はあまりありませんね
 

 皆さんがどういう術師になりたいのか、どういう術を極めたいのか
 それが一番重要になってきます」

ここまでで、「なにか質問はありますか?」
前を見ていた子供たちが一斉に先生から視線をそらす

沈黙した時間が続くかと思われた

恐る恐る一本の手があがる
「はい、なんですか?」
「あ、あの…上位魔術を使うにはその系統の術を極めないといけないんですよね」
「そうですね 中には2系統3系統と増やす術師もいますが、
 多くの術師は1系統となります」
「では…」

少年の言いづらそうに続けた
「リシード様はどうして、様々な系統の魔術を使えるのですか?」
そうですね…と先生は考え込む
「ごく稀に、そういう体質の…いわゆる天性を持った人が生まれるのは事実です
 皆さんが知っている人で言うと…」


「魔界の王、魔王ラーギ様がそうですね」
魔王と聞いた瞬間子どもたちはざわめいた

「確か、ラーギ様も全ての系統の術を使えたはずです
 こういうケースは本当に稀で、あまり聞きませんけどね」


アークはつまらなかった
こういう時、去年までなら自分が話題になっていたのに

たった一時のあの出来事のおがけで
この家の跡取りである自分はナンバー2

どこの馬の骨ともわからない少年がトップに立ち
一瞬、リシードがラーギの子ではないかと思ったが、
だったらどうしてこんなところにいるのか
ありえないと思った

ふとリシードの方を見ると、
周囲からちやほやされて、軽く笑みをこぼしている
「本当は魔王の子じゃないんですか?」
「おぉ、魔界の王子様」

「まさか…」
まんざらでもない様子のリシードにアークは
心の中で舌打ちした











「釣り野伏せ…してみる?」
「御冗談を」

カイルの悪戯心満載の瞳が微笑んだ
それに間髪いれずツッコむスピリタス


「うふふ
 で、どうすればいいんですの?」
「俺とウィンであのカスアードの少年と戦おう
 スピリタスとロウビィは本隊の方を頼む」
「俺と…スピリタスの2人…ですか?」
「途中からフェーレンも合流する
 カスアードの彼にも隊が付くはずだし、
 アーロムの編成はここに示してある通りだ」
カイルはPCから表を印刷すると、それを皆の前に出した
「襲撃はいつになりますか?」
「明日の朝方だ」
みぃは編成表を見ながら、カイルに問いかける
「こちらとしても準備は万全にしておかなければなりませんね」
「あぁ、釣ってもいいけど、伏せてはいけない」行動の動きが遅くなる
いつも通りの感じで行こう






「スピリタスを守る…か」
ロウビィは月明かりの下、一人佇んでいた
「無茶言うなよ、軍師のくせに」

「誰を守ると?」
「げ」
「げとは何だ」
いつからそこにいたのだろうか、
スピリタスは無機質な目をロウビィにぐいと近づけた

観念したロウビィは両手をあげて降参のポーズをとる

「フェーレンが言ってたんだよ、お前を守れって」
「俺がお前に守られるほど弱いと思うか?」
「だから、無茶言うなよって言ったんだよ」

身長差では勝っているものの、どうしてスピリタスに押され気味なのか

「クズが」
「クズで結構」

ロウビィの胸倉をやっと解放したスピリタスは
すたすたと去って行った

「……やっぱ、俺には無理」
偶には当てを外せよ、フェーレン

諦めたロウビィは笛を手に蜂を呼び出した
------
続き考えないといけない……

ついに最終決戦なんで   (そんな大層なもんじゃない
気合い入れて考えないと

12権の3巻が8月に発売らしい
フヒトまでの一時休憩にできそうです(笑)


しっかし、今日の三成KY過ぎません?
そんなだから敵作っちゃうんだよ




ちょっと短いです

「緑色の砂」
------

 あと数日

カイルのその言葉がロウビィの頭に浮かんでは消えて行く



一体スピリタスを何から守ればいいのか
カイルから聞いたヴァルク流術師の話


あと数日で総てが片付く
そう思うと少し気が楽になった気がするのだが

「リッカさんから情報が来たようですわ」
「六華から?」
ウィンがフワフワと部屋に入ってくる

「リッカの技術者の中にここ数カ月で行方不明になった方がいるそうですわ」
「じゃあ、決まりだな」
「そうですわ
 その連れ去られたリッカの方から何者かが情報を聞き出し、
 偽物のリッカカスアードの薬品を作りだしたのですわ」
「六華…神…か」
ロウビィは少し離れて座るスピリタスを見た

「人が神に成るなどおこがましいにも程があるが、
 確かに六華は神だろうな」
「スピリタス…」
「その神に近しい人を利用するなんて天罰が下るだろう」
「でも、リッカさんはしばらく動かないそうですわ」
「事件が解決するまではな」解決したら行動を開始するだろう

本を読みながら、スピリタスは淡々と答える

「お前が神…ねぇ」似合ねぇ
「そうか?」
「スピリタスさんは誰が信仰している神様でもいますの?」
「信仰はしていないが、尊敬している神はいるな」
「へぇ~誰?」
「氷海姫神…フェルーザ様だ」

あと数日…その言葉が頭の中で復唱されながらも
ロウビィはスピリタスの意外な一面を不思議な気持ちで見ていた













時には同じ年代の子と話すのも重要だと姉に言われ
アークはリシードと木陰で他愛もない話をしていた

「若様は尊敬してる神様っておられますか?」
「あぁ 霊水魔師フェルーザ様だ」
「どうしてですか?」
「フェルーザ様は、仲間を守るか世界を守るかの二択に迫られた時
 自分が神としての禁忌を犯すことで、二つとも守ったんだろ?かっこいいじゃないか」

「俺だって、みんなも全て守りたい そのためにはフェルーザ様のような強さが必要なんだ
 だから、俺は強くなる」

アークはキッと空を見上げる
その空はとても晴れていて

「お言葉ですが、フェルーザ様はただ強いだけではないと思いますよ
 強いだけじゃなくて仲間を思う強い気持ちもあったから、ご自分を犠牲にされたんでしょう?」

まるでアーク様にそれができますか?と言わんばかりの口調でリシードは言う


「お前・・・俺を誰だと思っている」この家の息子・アークだぞ

「アーク様が勘違いなさっているのではないかと思っただけですよ」
リシードはぺこりと頭を下げるとその場を離れていった

(リシード…使用人のくせに)




自分はこの家の一人息子であり、有能な術師
相手は身寄りもないただの雇われた、孤児

まさか、意外な運命の悪戯のせいでライバル同士となるなどと
思いもしないアークだった

------
そろそろ終盤
完結したらまとめてHPの方にアップしようかと思います

絵版のリンク切れをご指摘いただいたのですが、
いかんせんこの頃は消滅防止しか描いていないので

気が済むまでこのままにしておこうかと思います


ーー----
「カイルさんって負けたことあるんですか?」



ふとした疑問をロウビィは口にした

「当り前さ 俺が無敵だとでも思っていたのか?」
笑いを含んだ回答にロウビィはちょっと驚いた
「今でこそ、デバック能力やら術やらで
 そう簡単に負ける気はないが
 以前は術もバグも何も使えないただの人間だったからね」

きっと、本気を出せばロウビィでも倒せたさ
カイルはさらっと言うと再びパソコンに眼を向けた
カタカタとリズムの良いタイピング音がする

「死にそうになった事とかあるんですか?」
「そうだね…事故で死にかけたことは何度もあるけど
 対人となると…夜一の時かな?」
「ヤイチ?」
「不知火 夜一という殺人鬼と戦ったときだ」
「強いんですか?」
「相当ね」
聞いてしまってから、カイルが死にかけたというのだから
相当強い事にロウビィは気付いた

「尤も彼の場合は、それだけではない
 小学生の時に叔母夫婦を惨殺し火を放っている
 とても猟奇的な少年だ」
「それって普通の人間なんですよね?」地球でのことですよね
「あぁ 普通の人間…のはずだったんだけど」

カイルはパソコンから窓に目を映した
カーテンを少し開けるとすっかり暗くなった空が見えた











「イザナミのカイル…カイル=マ-ティン」
「お前は誰だ」

金髪金眼の黒い服を着た少年と
黒髪赤眼のこれまた黒い服を着た少年が向かいあう

黒髪の少年の方が、多少幼く見えるが
心境的には金髪の少年の方が押されていた


任務の為に森の中に入り込んだカイル
シグマから任務の終了をメールで告げられたが、
何処をどう歩いたのかすっかり迷ってしまった

そこで出会った緑がかった黒髪の少年
その緑は夜の闇にまぎれ、すっかり黒くなっていた

カイルは自分より数歳年下に見え、地元の少年なんだとばかり思っていた
が、カイルの金髪と金眼を見た瞬間、
少年はその正体を当ててしまった

油断していた気がとたんにピンと張りつめる

「もう一度聞く、お前は誰だ」
「僕は不知火 夜一」
「シラヌイ、ヤイチ…!?」

その言葉にカイルは覚えがあった
以前シグマから聞いていた、裏の世界で
指名手配に等しい扱いをされている少年だった

武術の名門、不知火家の後継ぎにして
10にも満たない年齢で猟奇殺人を行った狂気の少年

彼を追うのは不知火の遺族に限らず
イザナミ、イザナギ、スサノオetc様々な組織から目をつけられていた


「あの、不知火 夜一か…」
まさか、こんなところで出会おうとは
ここで彼を捕まえれば、イザナミにとって大きな利益となる
そう確信したカイルは、隠していた短刀を手に構えた

夜一の瞳にカイルの短刀が輝く

カイルは考えていた
あの狂気の少年は見た感じ、自分より年下の普通の少年である
しかし、あの不知火一族の血を受け継ぎ
何よりも有名な猟奇殺人を犯しているというお墨付きの実力をもっているはず

ぼんやり突っ立ったままの夜一は
無表情のままただカイルを見ていた

(一瞬を突いて、気を失わせるか)
カイルの中である程度の策は完成した
あとは実行に移すのみである
(唯一の問題としては、彼が本当に夜一なのかと言う事だが、
 まぁ別人なら動きでわかるだろう)


カイルは左手に構えた短刀で、夜一に向け軌道を描いた

シュッとキレのいい音が微かに聞こえた
しかし、それが目標に当たることはなく

無表情のまま夜一はソレを避けた
カイルは突き出した左手で短刀の向きを反対にすると
夜一に切りかかる

木々の合間を夜一は華麗に避けて行く
カイルはそれを追うも、まったくかすりもしなかった

(彼は本物だが…どうする)
もう何秒切りかかっただろうか
総ての攻撃が見事と言うほど外れていく

このまま長期戦になれば自分が不利になることをカイルは確信した

そして、この時に撤退していればよかったと
カイルはロウビィに告げた






刃物では勝ち目がない
そう考えたカイルはついに拳銃を取り出す
右手でそれを構えた

刃物で切りかかり、それを夜一が避ける
その避けた瞬間にカイルは銃で夜一を狙った



(まさか…)
その気になれば手を伸ばしても届きそうな距離である
しかし、夜一はソレを避けた
「僕を殺す気…?」
「……殺すつもりはないんだがな」
ちょっと付き合ってもらおうかと思って

カイルは思わず、一歩ひいた
そしてその判断はまさに野生の勘とでもいうのだろうか
まったくもって正しかったのである

「クク…フフフフフフ……」
下を向いた夜一から不気味な笑い声が聞こえる
とても少年が出しているとは思えない
地獄の底から聞こえるようなそんな声だった

カイルの額から汗が流れる
(ヤバい)
本能がそう叫んでいた

「いいよ、遊んであげる……」


ククク…フフフ…フフフフフ


ひゃああぁぁあああぁぁぁっはっはっはっはっはっはっは




木々に足があるとしたら、皆一目散に逃げているのだろう

その声は夜の静寂にとてもよく響き、
カイルに恐怖心を味わわせるには十分だった

動かない足を何とか動かしてカイルは逃げようと後ろを見る










そこには夜一がいた

「あっははっはははははっ」
いつの間に持ったのだろうか
両手で石を持ち、カイルに殴りかかる

かろうじてそれを避けたカイルだが、夜一の攻撃は止まらない
「ひゃっははははははははは」
「っ……」

どうやって重い石を持ちながらバランスが取れるのだろうか
さっきまでの寡黙な少年とは全く違う夜一に
カイルの頭には猟奇殺人の事が浮かんでいた

(彼の叔母夫婦と言えば、不知火家の一員…有能な闘士でもある
 それをたった一人で殺めた事を思えば…)
彼の狂気に満ちた雰囲気もある意味納得のいくものだった


冷静に彼を分析してみるものの、
危険な状況から脱出できるわけでもない

夜一の攻撃は止まっていた
彼は石をおろし、またぼんやりと突っ立っていた

ここは単純に…(走って逃げるか)
しかしその目論見は脆くも崩れ去った



「っう……」
考え事をしていたその一瞬を突かれたのだ
右足に火でも浴びたような鈍痛が走る

どこからあったのか夜一は金属バットを手にしていた

「ひゃははは」







    死んじゃえ




背筋が凍るとはこういう事なのか
カイルはそれを身をもって実感した

夜一のイカレた笑み、そして赤い眼がカイルの脳裏に焼き付いていく
座り込んだカイルに夜一は一歩ずつ近づいてきた

無意識に拳銃で夜一を撃つも、総てが避けられていった


「死ね、死ね、死ねぇぇぇええぇぇ!!!!」

あっはははははははははははは



ガン、ガンとゆっくりとしたリズムで
バットが振り下ろされていく

夜一はまるで人形のようにその動作を繰り返している

カイルの腕には赤い血が流れる
肘からポタンと地に落ちた






恐怖の時間を止めたのは待ち望んだ声だったのかもしれない

「カイルッ」


ガンと銃声が響く
夜一はそれを避けるためにカイルから数歩離れる

「……シグマ」
シグマは銃を構えたままカイルにゆっくりと近づく
まるで反比例のように夜一はカイルから離れて行った


「ひきます」
ボソリとシグマはカイルに告げた








「…でどうなったんですか?」
「俺はこの通りピンピンしている
 ……なんてな 片腕の骨に罅が入ってな」
しかもその治療の中、ずっとシグマから説教を受けていたし

「カイルさんが、説教…ですか?」
「敵の実力と自分の実力をしっかり見極めろ、ってな」
今は笑っているものの、当時は相当ショックだったのだろうか
語尾がややかすれた気がした

「ロウビィも緑がかった黒髪をもつ赤眼の少年には気をつけろよ」
「無茶言わないでくださいよ」
この世界に緑髪も赤眼もたくさんいる
カイルのいた地球とは世界が違うのだ

「でも、それからかな
 ちゃんと相手の事を調べて、策を練って
 知識をつけて、どんな非常事態にも対応できるようになろうと思ったのは」
「因みに、シグマさんは夜一に勝ったんですか?」
「撤退した…という点からすると、勝ったんだろうね
 勿論、俺も今なら再戦しても負ける気はしない」

カイルはパソコンを閉じると、ロウビィに笑いかける
「ロウビィもあの奇声を一回聞いてみると良いかもな
 夜眠れなくなる」俺では再現しきれないけど
「全力で遠慮しておきます……」
------
以前、サクヤを襲ったのも夜一
そして、夜一は俺の嫁(笑)

に、2年 (3年) ぶりの更新・・・です・・・

「緑色の砂」
------
「やっべ、旦那様だ」
「え?」
「逃げるぞ、リシード」
「えぇ??」

だかだかと走る音が洞窟内に反響する
見つかったらヤバい、そう確信している彼らは後ろを振り返る事もなく走り去っていった


何がなんだかよくわからないリシードが一人、後に残された



「ふん、お前らか」・・・まったく
後ろから懐中電灯で照らされる
リシードがハッと後ろを向くと、旦那様と言われた男性が呆れ顔を向けた

眩しさに慣れたころに、男性の容姿がはっきりとわかってくる
家の中だというのにピシッと着こなされたスーツに家の主たる威厳
ザサンタルは懐中電灯の先をリシードからずらした


「・・・・・・ごめんなさい」
よく事情はわからないが、多分入ってはいけないところだったのだろう
そう思ったリシードは口先だけでも謝っておくことにした

「まあよい」出入りを禁じた覚えはないからな
「・・・ありがとうございます」
「許可した覚えもないが」
「旦那様・・・」

「別に咎めはせん」
ザサンタルはフッと笑みを浮かべた「私もよく面白半分に忍び込んだものだ」



呪文が洞窟内に響く
響くがゆえに、何と言っているかはわからない

呪文を言い終えた後に、ゆっくりと洞窟内の明かりがついた

眩しくもなく遅くもなく
天井付近の電灯から黄色い光が洞窟に広がっていく


「恐らくコレだろう?」
ザサンタルは視線を移す
その先には緑色に光輝く壁があった

光を当てることで、緑色に光輝く壁
・・・・・否、光っているのは洞窟の壁を構成する、岩


「旦那様、これは・・・」
「フェーラニウム・ラヌ・ディファライトだ」やはり、付き合わされただけか

近くの岩を見るも、岩が光っているようにしか見えない
まるで、宝石のように光を放つ岩にリシードは見入っていた

「奇麗だろう?」
「はい」
「これは、本来ならば海の中でしか採れない貴重な鉱物でな
 地上では恐らくここを含め幾か所もないだろう

 光っているのは岩ではなく、その中に含まれる砂なのだ
 この緑色の砂には特別な力があってな、それゆえ価値も高い」

「そんなものが、このお屋敷に・・・」
リシードがそっと触れるも手には付かない
好奇心から爪を立ててみたが、爪が緑色に光る事はなかった

「私も子供の頃いろいろ試したのだがな、無理だった」
リシードの横から覗き込むようにザサンタルが笑いかける

「なんでも、海の中なら簡単に採れるそうだが、地上では特殊な方法を使わんと採れないそうだ」
逃げた奴らにも言っておいてやれ

「はい」
「海の中だからと塩水をかけても無駄だともな」
「はい」
ザサンタルが昔を思い出すように笑うと、リシードもつられて笑った




確かに
何か特別な力があり気なくらい神秘的な光を放っている
見てるだけでも、十分価値はあるのだろう

「もう少し、見ているか?」
「いいのですか?」
確認のはずだが、パッと笑顔になったその顔には見ていたい気持ちが十分に映し出されていて

「あぁ、構わん」
「ありがとうございます」
恐らく屋敷に来てから一番であろう感謝の気持ちを込め、リシードはぺこんと頭を下げた

「私はやる事があるが、気が済んだら好きに出ていくがいい」
「はい」

つまり、邪魔しない限り、気が済むまで見てていい

ザサンタルがなにやら言いだしたが、リシードは何も気に留めずただただ緑色の砂に心を奪われていた














・・・一匹、二匹

やや背の高い草に覆われた草原を歩くスピリタスは空を見やる

「五匹」やはり、あいつか


視線の先には蜂が数匹群れている
こんな草の中に蜂が巣を作るわけもなく、何かと闘っているわけもなく

それがよく知る人物の使いだと確信するのに時間はかからなかった




「スピリタス!!」無事だったか・・・
「・・・クズが」

やや視界が開けた先に、黒いツインテールの頭が見える
スピリタスがあった中では一番長い髪を持つ彼は、スピリタスの姿を見た瞬間、安堵の表情を浮かべた

「何でお前が・・・」
「悪ぃ」
「クズ」

まぁいい、スピリタスはそう言うと1人カイルのいるアジトの方へ動き出した












「あと数日だね」
「何がですの?」
「奴らが来るのがさ」
2台のパソコンに向かいながらカイルはさっぱりと言い放った

「あと数日であの偽リッカの少年が来るのですね」
「あぁ、俺の計算だと、今ゴード対策の真っ最中だろう」
それが、あと数日で終わる

「じゃあこんなわかりやすいアジトを選ぶ必要はないんじゃないですか?」
「そうはいかない」彼を保護しないといけないからね
今彼らがいるアジトは以前もアジトとして使われており、
一度襲撃を受けた事があり、その筋には知られているアジトだった

そんな所に敢えて陣を引くカイル
凡人のロウビィには思いつかない判断だった

「カイル様、敵に釣り野伏せなどと思われないでしょうか?」
「う~ん、わかっていても、偽とはいえリッカの力を持っているからね…
 力押しで通せると思っているんじゃないだろうか」
「そうですか」
スピリタスはカイルと戦術の話を始める
ウィンとロウビィの頭には?マークが浮かんでいた
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どうやら、私のタイピングは早いらしい・・・
その分間違えてるから意味ないような気もするんだけれど
 

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